ベトナムには、文化遺産、歴史、食文化、伝統工芸村から、物語、人物、地名に至るまで、豊富な文化資源があります。では、こうした資源をどのように創作の素材に変え、知的財産(IP)へと発展させ、市場で価値を生み出すことができるのでしょうか。

先ごろ開催された「Culture Tech 2026:文化からIPへ」は、文化資源をIPへと発展させ、IPを市場に届けるための新たな視点を提示しました。このセミナーは、TRIHD ASIA社がホーチミン市情報処理協会(HCA)と共同で開催しました。
科学技術・教育開発研究所副所長で、TRIHD会長のホアン・ティ・タイン・ハン氏(修士)は、一つの文化遺産、一品の料理、一つの伝統工芸村の背後には、まだ名付けられていない「IPの鉱脈」が存在する可能性があると述べました。同氏は、国際的な経験、特に韓国が文化コンテンツを体験と消費のエコシステムへと育てた方法を踏まえ、文化資源が創作を通じてIPとなり、市場を開拓するまでの価値連鎖を示しました。その全過程を通じて技術が役割を果たし、文化資源のデジタル化、物語として語り直すこと、より多くの人が触れられる機会の拡大を支えます。

博物館の視点から、ホーチミン市歴史博物館のグェン・カック・スアン・ティ館長(修士)は、博物館は実物資料を保存するだけでなく、人物や物語、記憶、まだ十分に語られていない世界も伝え残していると強調しました。歴史資料は、デジタル化され、適切な方法でアクセスできるようになれば、創作に携わる人々やクリエイター世代の創作の原料になり得ます。ただし、ティ氏によると、文化遺産を創作に開放するには、原資料の真正性を尊重することも必要です。創造性を発揮すればするほど、データの基盤と文化遺産への正しい理解が求められます。

価値連鎖のもう一方の端から、ダブリューティーシー・ベカメックスのフイン・ディン・タイ・リン社長(修士)は、IPを市場に送り出せるかという問題を提起しました。同氏によると、IPの誕生は終着点ではなく、商品化、ライセンス供与、流通、体験の開発に取り組む過程の出発点です。物語が真に創造的な資産となるのは、作品の外でも生き続け、暮らしの中で価値を生み出せるときです。
映画界からの視点は、映画雑誌「テー・ゾイ・ディエン・アイン」編集長でジャーナリストのホアン・アイン・トゥアン氏へのインタビューの一節を通じて紹介されました。トゥアン氏によると、ベトナムでは映画や文化から生まれるIPが芽生え始めています。しかし、IPが大きな注目を集める時期に地域の準備が間に合わず、インフラがIPの発展を後追いするケースもあります。
映画『草原に黄色い花を見つける』は、フーイエンを観光地として広く知らしめましたが、宿泊施設、交通、サービスの基盤は、新たに生じた需要に必ずしも迅速に対応できませんでした。こうした例は、IPを生み出すことは最初の一歩にすぎず、IPが成長し、長期的な価値を生み出せるよう、エコシステム全体を準備する必要があることを示しています。

ホアン・ティ・タイン・ハン氏(修士)は、「文化には資源があり、創作には担い手がいて、市場には需要があります。しかし、それらのつながりには接着剤が欠けています」と指摘しました。その「接着剤」とは、資源の所有者、クリエイター、企業、技術、市場を結び付けるとともに、各当事者の権利、役割、利益を明確にできるエコシステムです。これは「CULTURE TECH 2026:文化からIPへ」の理念でもあります。文化をデジタル化するだけでなく、文化資源の宝庫をクリエイティブ産業に開き、受け継がれてきた価値が語り継がれ、IPへと発展し、現代の暮らしに新たな価値を生み出せるようにすることです。
文化からIPへの道のりは、創作だけの道のりではありません。資源を資産に変え、文化的価値を、それを生み出した作品の枠を超えてさらに広げていく道のりです。
続いて行われた「誰が文化をIPに変えるのでしょうか」と題するパネル討論では、価値連鎖における各主体の役割や、誰が資源を所有し、誰が創作し、誰が投資し、誰が権利を所有し、誰が商品化し、誰がIPを人々に届けるのかといった問題が提起されました。
登壇者の見方では、IPを育てる機会は、食品、農産物、伝統工芸村から歴史、文化遺産、芸術まで、実に多くの分野にあります。重要なのは、すでに存在する資源の中にIPの可能性を見いだし、関係者が共に参加できる仕組みを構築することです。