パルマ・マラソン・マヨルカ(TUI Palma Marathon Mallorca)、Strava、および海南マラソンのデータによると、ランニングと旅行を融合させた「旅ラン」の波が若者の間で急速に普及しています。
マラソン大会への参加を目的とした旅行は、英語のRace(レース)とVacation(休暇)を組み合わせて「レースケーション(Race-cation)」と呼ばれ、2024年から2026年にかけて爆発的なブームとなっています。このトレンドは、大規模イベントであるマラソン大会を通じて現地の魅力を発見したいという探究心と、休暇中も健康的な体調を維持したいというニーズを同時に満たすものです。
2日間の週末休みがあれば、レースケーションを完結させるには十分です。豪華なビーチや高級リゾートで長時間過ごす従来の休暇とは異なり、このレジャー形態は、多忙な若者のスケジュールに適合し、さらにはSNSで自分の成果を「チェックイン」したり共有したりしたいという欲求にも応えています。
中高年のスポーツから若者のトレンドへ
かつてマラソンは、経済的に安定した40代以上の中高年層の舞台と見なされてきました。しかし、最新のデータは若者の参入が著しいことを示しています。
2025年のパルマ・マラソン・マヨルカでは、76カ国から9,000人以上が参加し、チケットは開催の2カ月前に完売しました。特筆すべきは、この大会で初めて25歳から29歳の年齢層の申込数が、伝統的なボリューム層であった40~45歳を上回ったことです。
TUI UK & Irelandのコマーシャル・ディレクター、クリス・ローガン氏は、若者のレジャー習慣が変化しており、彼らがレースケーションの牽引役になっていると分析しています。同様に、2026年のロンドンマラソンのレポートでも、申込者の3分の1以上が18歳から29歳であり、Z世代が主導的な役割を果たしていることが裏付けられています。
Stravaの「Year In Sport Trend Report 2025」によれば、2025年にハーフマラソンやフルマラソンに参加したZ世代の割合は30%以上増加しました。また、この世代は「大会やイベントへの参加」をトレーニングの主な動機とする傾向が、X世代(1960年代〜70年代生まれ)よりも75%高いという結果が出ています。
ベトナムにおける爆発的な普及と経済効果
ベトナムでもこの潮流は顕著です。2025年の「VnExpressマラソン」シリーズには延べ30万人以上が参加しましたが、その32%を18歳から34歳のランナーが占めています。特にZ世代の参加数は、この4年間で3倍に増加しました。
レースケーションの爆発的な普及には、Stravaのようなトレーニング記録アプリや、Z世代のSNS習慣が大きく寄与しています。見知らぬ街の地図上に自分の走行ルート(トラックログ)を刻み、それをStravaやThreadsでシェアすることは、若者にとって欠かせない「儀式」となっており、それが彼らを旅へと駆り立てる原動力になっています。
Peek Proの調査によると、Z世代の68%が「実体験型」の休暇を優先しています。ベトナムにおいても、Vietnam Reportの調査で国内のZ世代の約54%が2026年に旅行回数を増やす予定であると回答しています。冒険心があり、柔軟でアウトドア活動を好む彼らにとって、レースケーションは理想的な選択肢なのです。
また、このトレンドは開催地に莫大な収益をもたらしています。
2026年の元旦近くに開催された中国の「海南マラソン2025」を例に見ると、三亜(サンヤ)での年越しと現地の文化体験を組み合わせたこの大会により、市内のホテルの92%が満室となりました。PR Newswireによると、この大会による沿道の商業消費支出は35%増加したといいます。
ランニングと旅行の融合は、現在、ポテンシャルの高いニッチ産業を切り拓いています。オフシーズンにおける観光需要の拡大がマラソン大会の乱立を後押ししていますが、若者の実需に基づいたZ世代という顧客層こそが、今後の主要な成長エンジンになろうとしています。