「AIが真の価値を持つのは、責任感と人間愛をもって導入されたときだけである」——FPTのグエン・ヴァン・コアCEOは、このメッセージを強調し、AIを「人間に代わる」のではなく「人間の能力を高める」という方向性で取り組むよう、経営者たちに呼びかけました。
先日、ホーチミン市で開催された「リーダーズ・フォーラム 2025」において、「AIは私たちから人間性の核を奪うのか、それともリーダーが人間に深く触れるためのテコとなるのか？」という現代的な問いが専門家たちから投げかけられました。
約800人のリーダー、CEO、管理職が参加したこのフォーラムは、経営幹部が直接耳を傾け、議論し、自らを振り返る貴重な対話の場となりました。
AIを生活の息吹とし、人間に奉仕させる
2019年にAIディレクターのポジションを設置し、四半期ごとにAI会議を開催して最高幹部を結びつけ、各部門でのAI使用の進捗状況を更新しているという企業の視点から、FPTのグエン・ヴァン・コアCEOは、AIは単なる技術ではなく、「生活の息吹」であると断言しました。AIを仕事の隅々まで導入する目的は、人間の能力を向上させることであり、人間に取って代わることではない、と述べました。
FPTのCEOは、現在FPTが84,000人の職員のために1,000のAIエージェントを展開していることを明らかにしました。これには、プログラミング支援ツールのCodeVista、個別学習プラットフォームのAI Mentor、そして人事管理およびデジタルコミュニケーションのエコシステムであるmyFPT、FPT Chat、FPT Placeなどが含まれます。これらは、FPTの「AIを生活に取り込む」という戦略の具体的な証拠です。
さらに、FPTは「利・率・変」という3つの主要な目標に基づいて設計された「包括的なAIエコシステム」を構築しています。「利」は利益成長への貢献、「率」は労働生産性の向上、「変」はイノベーションの促進を意味します。
同グループはまた、社内イノベーションプラットフォームである「iKhiến（イキエン）」を通じて、イノベーションアイデアの20%をAIに直接関連付けることを目標としています。このプラットフォームは、年間2,500〜3,000件のイニシアチブを生み出しています。
特に2024年には、iKhiếnのイニシアチブにより、労働生産性が約30%向上し、8,650億ベトナムドン以上の利益に貢献し、そのうちAIは約23%（2,000億ベトナムドンに相当）を占めました。
文化はデジタルトランスフォーメーションにおける戦略的フィルター
FPTのCEOによると、「速く進みたいならテクノロジーを使い、長く続けたいなら文化を使うべきだ」といいます。テクノロジーはツールであり、文化こそがアイデンティティです。これは、FPTの人間への長期的な投資に対するコミットメントでもあります。
2024年だけでも、同グループは数万人の社員向けにAI普及プログラムを展開し、同時に経営幹部や中間管理職向けに専門的なコースを設計しました。目標は、全職員にAIトレーニングを実施し、AI時代に社員が主体的かつ自信を持って行動し、「取って代わられる」という心理を避けることです。
「ハイタッチ」（人間的な触れ合い）なアプローチの具体的な例として、FPTが3つの新しいワークプラットフォーム（myFPT Next、社内チャットアプリ FPT Chat、社内SNS FPT Place）への移行を挙げました。
myFPT Nextアプリは、コミュニケーション、パフォーマンス管理、表彰、自己啓発、福利厚生という5つのコアバリューを中心とした重要な機能を統合する「スーパーアプリ」の役割を果たしています。この「スーパーアプリ」により、グループのメンバー企業は独自の「ミニアプリ」を共通プラットフォームに構築・接続し、社内連携を強化し、ユーザー体験を最適化することができます。同時に、社内チャットプラットフォームのFPT Chatと社内SNSのFPT Placeは、サービス終了となったMetaのWorkplaceとWorkChatに代わるものです。
当初、社員には懸念がありましたが、実際の利用価値を最優先し、給与やボーナス、保険の確認といった職員が最も関心のある便利機能をmyFPT Nextに導入し、FPT Chatで直接業務を依頼できる機能などを開発したことに加え、リーダーが率先して試用した結果、わずか2ヶ月で利用率は87.6%に達しました。
結論として、FPTのCEOは、FPTは責任感と人間愛をもってAIに取り組み、人間を中心に置くことで、テクノロジーが人間に取って代わるのではなく、能力を高めるツールとなることを選択していると強調しました。
この方針に基づき、FPTのCEOはベトナムの企業リーダーたちに対し、AIを単なる製品だけでなく、思考、文化、働き方、そして人材能力の開発までも刷新する機会として捉えるよう呼びかけました。
